持続可能な開発目標「SDGs」 食の視点から考える5つの目標
通称SDGsと呼ばれている「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」。この中には、飢餓や食品ロスなど食にかかわる問題も多く含まれており、発展途上国だけでなく、先進国のさらなる行動が求められています。
今回はSDGsを食の視点からご紹介し、今後私たちが地球のためにできることを一緒に考えていきましょう。
SDGsの17の目標における5Pとは
SDGsは、2015年9月に行われた国連サミットにおいて採択されました。SDGsは17のゴールと169のターゲットから構成されており、全世界が取り組むべき国際目標でもあります。人間と地球の繁栄のための行動計画ともいわれ、目標期限は2030年に設定されています。
では、SDGsに掲げられている17のゴールをPeople(人間)、Prosperity(豊かさ)、Planet(地球)、Peace(平和)、Partnership(パートナーシップ)の5つのPに分類して詳しく見ていきましょう。
People(人間)
すべての人の人権が尊重され、平等に個々の潜在能力が発揮できるようにすることが目標です。この中には、性差をなくすこと、すべての人に教育の機会を与えること、衛生環境や医療体制の整備も含まれています。目標1〜6がこれに該当します。
Prosperity(豊かさ)
すべての人が豊かで充実した毎日を送れるようにすることが目標です。目標7〜11がこれに該当し、自然に優しい持続可能な技術開発や労働環境の改善なども含まれます。現在、先進国では再生可能エネルギーの利用が始まっています。
Planet(地球)
目標12〜15がこれに該当し、森林伐採など地球の破壊を阻止し、生物多様性を維持することがゴールです。この中では、消費者として食品ロスを減らすこと、生産者として自然にダメージを与えない技術開発が求められています。
Peace(平和)
目標16「平和と公平をすべての人に」が、これに当てはまります。信じ難いことですが、ユニセフの報告によると、世界中の5人に1人の子供が虐待などの暴力によって亡くなっていると言われています。そして、ウクライナの戦争は暴力にとどまらず、世界的な食糧不安と貧困の悪化を招いていることが問題です。
Partnership(パートナーシップ)
「パートナーシップで目標を達成しよう」これが目標17で掲げられていることです。全世界の人たちが協力し合うことが求められ、この目標を達成するためには、民間企業をはじめ、政府や国際機関の積極的な関わりが必要となります。
食の視点から見るSDGsの5つの目標
SDGsで重要なことは、だれ一人として取り残さないことです。ここでは、食の観点からSDGsを見ていきます。先ほど説明したPeople(人間)に該当する目標2と3、そしてPlanet(地球)に含まれる目標12・14・15が食に関連しています。
目標2 飢餓をゼロに
国連食糧農業機関(FAO)の報告によれば、2021年の飢餓人口は8億2800万人にまで達し、2019年と比較して1億5000万人の増加となりました。
出典:FAO「世界の食糧安全保障と栄養の現状2022年版」
なぜこの3年間でこれほど飢餓が増えたのでしょうか?その理由は、コロナウイルス感染拡大による経済活動の停滞が挙げられます。コロナ禍に職を失い、経済的な困難に直面した人もたくさんいました。
これに加えて、地球温暖化による干ばつなどの自然災害、ウクライナ戦争のような紛争や内戦は、食糧の生産から消費にいたる一連の流れを止め、結果的に物価の上昇を引き起こしていると国連報告書で報告されています。この状況下では、今後も飢餓人口が増える恐れがあります。
飢餓に対する解決策としては、各国が協力して公平なフードシステムの構築を目指すことです。そして、消費者としてできることは、地元で作られた食品を購入することです。この行動は結果的に外国からの輸入を減らし、飢餓に苦しむ人たちに食糧が行き届くことにつながると考えられます。
目標3 すべての人に健康と福祉を
肺炎・下痢・マラリア、この3つは先進国では治せる病気です。ユニセフの報告によると、この3つの病気で約150万人の乳幼児が命を落としていると言われています。
そのほとんどを占めるのが、貧困に苦しむ南アフリカと南アジアの発展途上国に住む子供たちです。ユニセフの報告によると、サハラ以南の地域では、子どもの2人に1人が肺炎になっても治療を受けられていないと言われています。
この原因は医療格差であり、主な要因は医療サービスを受けるまでのアクセスのしやすさにあります。この状況には、生まれた場所や環境、所得や年齢など様々なことが関連しています。
医療格差をなくすためには、政府による支援や医療者を育成するための投資が必要です。私たちにできることは、まず現状を知ること、そしてユニセフなどへの募金が考えられます。
目標12 つくる責任 つかう責任
生産者も消費者も、地球の環境と人びとの健康を守れるよう、責任ある行動をとろう、これがスローガンです。農林水産省の報告によると、世界で生産されている食品の約3分の1が廃棄されていると言われています。この食品ロスを減らせるのは消費者側で、明日からでもできることが3つあります。
1つめは、買い物に行く前にリストを作り、無駄なものを買わないようにすること。2つめは、残り物や肉・魚介類を1人分ずつに分けて冷凍庫に保存すること。3つめは、外食して食べきれなかった場合には、持ち帰りを頼んでみること。このような個人の心がけが「つかう責任」に当てはまります。
また、生産者が食品ロスの減少に対してできる取り組みとして、今「規格外野菜の活用」が注目されています。規格外野菜とは、市場で決められた規格に当てはまらない野菜のことを指します。
アメリカでは食品ロスを減らすため、2019年に規格外野菜の配達サービスを行う企業が誕生しました。日本では、規格外野菜を用いた野菜海苔の開発に成功した会社もあります。このように、斬新なアイデアをサービスに活かすことが「つくる責任」に含まれます。
目標14 海の豊かさを守ろう
1950年以降に始まったプラスチック生産の急速な成長がもたらしたのは、プラスチックゴミの海への流出です。Our World in Dataの報告によれば、その量は年間1万〜10万トンにおよぶと指摘されています。
出典:Our World in Data「Plastic Pollution」
私たちが日常的に使っているビニール袋やペットボトルが海の生態系を壊しているのは事実です。海の豊かさを守るためにまずできることは、使い捨てのプラスチック製品を使わないことです。エコバッグを使用する、水筒を持ち歩く、コーヒータンブラーを使うなどの行動が求められています。
目標15 陸の豊さも守ろう
アフリカ、東南アジア、オーストラリアでは森林伐採が原因で砂漠化が進み、もともと生息していた生物が絶滅の危機にさらされています。
砂漠化を止めるために今行われているのが、植林活動です。森林を再生することは、地球温暖化をもたらす二酸化炭素を減らすことにもつながります。この植林活動は政府やNPOだけではなく、民間企業も積極的に行っています。
まとめ
今回は食の視点からSDGsを考えてみました。それぞれの消費者および生産者に、地球と世界中の人たちのことを考慮した責任ある行動が求められています。
SDGsに掲げられる17のゴールは、5つのPに分類できます。その中でも、People(人間)とPlanet(地球)に含まれる目標が食に関連しており、飢餓・医療格差・食品ロス・プラスチックゴミの増加・砂漠化など、現在の深刻な国際問題がSDGsの中で明確化されています。
消費者としてできることは、地産地消への貢献、食品ロスを減らすための行動、プラスチック製品の代替品の使用などが挙げられます。生産者としては、地球と人に優しいサービスを構築し、そのための技術開発を行うことが求められています。
SDGsの目標期限は2030年です。自分に何ができるかを考えていくことが大切です。